ゆめ。



短い夢を見た。




photo by boku-pochi -
写真の人は一昨年亡くなった元上司で、オレの前任者だった方。
父の古くからの友人であり、国内でも有数の時計師であり、オレに今の仕事を教え、多くの人に愛された。
そして父と同じく68歳でこの世を去った。

夢の中のオレは、修理を諦めても不思議は無い程に古くて痛んだ懐中時計を手にしていた。

夢の話なので脈絡はないが、どうやらオレはまだ若手で懐中時計はその上司からの依頼で、今思えば半ばオレに対する課題の様だった。

周囲には沢山の技術者の気配があり活気が感じられる。
彼の席から一番近い場所で作業していたオレは、外出から戻り白衣に着替えている彼に完成したばかりの鈍く銀色に光る懐中時計を見せた。

彼は白衣のボタンを留め終わると、懐中時計を手に取り言った。

「お?直ったんだね。流石だねぇ、良くできてるよ。」

自信はあったが、褒められると嬉しかった。

彼はいつも通りの笑みを浮かべ、楽しそうに言った。

「さて、次は何をやろうか?」

そこで夢が覚めた。


目が覚めても、その言葉がとても嬉しく耳から離れなかった。

「さて、次は何をやろうか?」

結果に満足し、期待を込められ、信頼され、愉しみ、未来を感じられる。


弱音を吐きたくは無い。
だが不覚にも、あの頃に戻りたいと思ってしまった。

同時に彼に謝りたい気持ちが心に拡がった。

「先輩方や貴方の築き上げた場所を守りきれそうにありません。」

でも、きっと彼は笑いながら言うだろう。

「良いんだよ。君が思う様にすれば。」


誰かにオレの苦悩を分かって欲しい訳じゃない。

ただ、余りにも今のオレの奥底にある絶望感と儚い希望を具現化した”鮮明な夢”を見た事に驚き、その事を何かに残しておきたかっただけだ。



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前向くしかないね。原田さんも応援してくれてるよ
| hide | 2012/02/15 4:15 PM |










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